創薬の光と影 2013 6 15

 昔のバイオテクノロジーは夢を追うものでしたが、
最近の技術は、現実に近づいてきました。
つまり、難病を治す薬の実現可能性が高くなってきたのです。
 しかし、そこに「落とし穴」があるのです。
現在でも、特定の「がん」に対しては、
それを治す薬、あるいは「がん」の拡大を抑える薬があるのです。
こうした薬は、分子標的薬とも言われています。
 主治医から「検査の結果、あなたは、がんです」と告げられて、
患者は、落胆し、大きなショックを受けるでしょう。
 しかし、医者から、「がんを治す薬がある」と言われた時、
患者の心には、希望の光が灯るでしょう。
 その先に絶望が待っているとは知らずに、
患者には笑顔が広がるでしょう。
 実は、この種の薬は、薬価としては、
1粒で、3,000円から5,000円にもなるのです。
 これは、国民皆保険制度の日本でも、大きな負担となるのです。
1日3粒で、9,000円、30日処方で、270,000円となります。
 患者の窓口での負担は、3割ですので、
270,000円の3割で、81,000円となります。
 この金額を聞いて、「高い」と思いつつも、
「家族で力を合わせれば、何とかなる」と頑張るのでしょうが、
せいぜい、頑張っても半年でしょう。
 庶民の家庭で、薬代81,000円は、大きな負担です。
薬代を工面する家族の苦悩を見て、
薬をやめてしまう患者も多いと聞きます。
 希望の後に、絶望が待っていた。
今の制度では、そういうことになるでしょう。
 経済的な理由で、
金持ちは生き残り、庶民は生き残れない。
 新薬が次々と開発されると、
こうした厳しい現実が、鮮明になってくるでしょう。
庶民にとって、創薬は、バラ色ではないのです。
(参考)
 なぜ、そんなに薬価が高いのかと思ったでしょうか。
それは、薬の開発には、巨額の開発費がかかるからです。
 創薬のバイオテクノロジー企業は、
どこも巨額の赤字を抱えていると言えるでしょう。
 もちろん、風邪薬のように市場が大きければ、
薬価を下げても、開発費を回収できるでしょうが、
患者が少ない病気では、市場が小さく、薬価は下がりません。
 もうひとつ、問題点を提起しましょう。
それは、高額療養費制度の問題です。
国民皆保険制度の日本では、患者の窓口での負担は3割でも、
治療費が100万円かかると、患者の負担は30万円にもなってしまいます。
 そこで、高額な負担を抑えるために、
高額療養費制度があります。
 3割負担と言っても、一定の上限を設けているのです。
それが、庶民の場合は、8万円強となっています。
 この制度は、けがや手術を想定したものとなっています。
手術は、毎月あるものではなく、たいてい1回でしょう。
だから、8万円と言っても、1回ならば、庶民でも払える金額でしょう。
 ところが、分子標的薬は、何年も、あるいは一生、服用を続けるものです。
毎月の負担が8万円、それが何年も続くとなると、
庶民には無理でしょう(一部軽減制度あり)。
 これが、経済的な理由で、
金持ちは生き残り、庶民は生き残れないという現実です。
 今後、バイオテクノロジーの発展で、
次々と、新薬が開発されるでしょう。
 しかし、庶民には関係ない話です。
国民皆保険制度の日本でも、「人間の命は、金次第」という厳しい現実があるのです。
 こうした問題は、2年前か3年前に、
何度も何度も、朝日新聞が取り上げましたが、
時の政権(民主党政権)は、内ゲバ(内紛)に夢中で、無視されたでしょう。
多くの国民は、「こんな政権は、ゴミ箱行きだ」と思ったのでしょう。








































































トップページへ戻る